homeホーム homeプロフィール homeチェスの紹介

 king プロフィール>チェスの紹介

チェスの紹介<もくじ>

 
★ チェスの起源
 ★ チェスの歴史
 ★ 日本のチェス界
 ★ 競技としてのチェス
 ★ チェスはスポーツか?
 ★ チェスと将棋
 ★ チェスをやってみませんか?
 ★ JCA函館支部
 ★ 函館チェスクラブ
 ★ チェスの教材
 ★ スイス式大会
 ★ タイブレーク
 ★ 象棋の競技人口は世界一?

   以上、すべて山田明弘が書きました。まちがいがあればご指摘願います。2010.04.24更新

もくじにもどる

チェスの起源  もくじにもどる

 むかしむかし、戦争好きな王様がいて国中がこまっておりました。平和を望んだある大臣が 見かねてチェスというゲームをつくり、王様に教えました。王様はすっかりチェスに夢中に なり、戦争はしなくなりました。その国は平和になったという…。めでたしめでたし。 これは有名なチェス起源の伝説です。

 また紀元前500年ころ作られた口承文学のラマーヤーナというインドの民話に、悪の神様が 妻を喜ばせるためにチェスを発明したとなっているということです。

   世界中で楽しまれているチェスの起源は諸説ありますが、古代インド起源説が一番有力です。 今までは4人制の「チャトランガ」というサイコロゲームが起源だと安易に言われてきました。 私個人はその説に不満でした。チェスが戦争のシミュレーションから生まれたと考えるのは、 自然です。どんな時代でも組織的な戦争に勝つためにはどうしても必要な作業です。 それなら、サイコロを使わない2人制の原始チェスから始まったと考えるほうが、より 筋が通っているからです。

 最近は原始チェスはチャトランガ以前に生まれていたという説も出ていますので、少し 溜飲が下がっています。真実はどこにあるのでしょうか。今後の研究が待たれます。 (この場でチェスの起源を議論をするつもりはありません。中国起源説もあります) いずれにしろ、チェスが紀元前のかなり古くからあるゲームということは言えます。

チェスの歴史  もくじにもどる

 以下、チェスの歴史をごく簡単にご紹介します。

 文献で確実にチェスの存在が証明されているのは、5世紀のアラビア。このころ、 すでにチェスはかなり進化して、普及しており、盛んに行われていました。 それは、あるチェスの名人の技量をたたえる詩が伝わっていることでもわかります。 ただし、ルールやゲームの内容は今と少しちがうものでした。 その後、アジアとヨーロッパの交流を介して、チェスは 10世紀頃までに、進化しながらヨーロッパ、東欧の隅々に広まりました。 その文化普及の波は、シルクロードを通して遠く日本にも及びました。 日本将棋の祖先がチェスの祖先と同じだというのはまちがいないでしょう。

 15世紀にはフランス、イタリアなどで近代チェスの体裁が整えられました。 ルールはほとんど現代チェスに近いものになり、チェスについて深い研究文献も、 数多く現れるようになりました。

 チェスはその後、さらに競技人口を増やし、アメリカなどにも普及します。 18、19世紀の欧米では、チェスが庶民の娯楽として一般的になりました。 さらに20世紀に入ると、世界選手権と銘打ったマッチも行われるようになりました。 そして、1924年には世界チェス連盟がフランスに設立され、組織を大きくしていきました。

 1927年、ロシアのアリョーヒンがキューバのカパブランカから世界チャンピオンを奪いました。 そのときから、チェスを文化として尊重したロシア(ソ連)が最強国となり、 その時代が長く続きました。そのころ「ロシアで1番になるのは世界で1番になるより難しい」という 冗談が語られていましたが、丸っきりウソではなかったのです。

 1972年、米国の超天才フィッシャーがロシアのスパスキーをやぶって世界チャンピオンとなり、 ロシアが支配したチェス界に風穴を開けました。当時は米ソの軍事対立のただ中であり、 「世紀のマッチ」と呼ばれ、チェスが連日マスコミの注目を浴びました。 フィッシャーの活躍は、ヨーロッパ以外の国に、チェスが普及する原動力でした。

 次期戦者はロシアのカルポフでしたが、フィッシャーは対戦を拒否し、姿を消しました。  1985年、ロシアの若手カスパロフは、そのカルポフとチェス史に残る死闘の末、世界最年少の 世界チャンピオンとなりました。そこから彼の時代が30年以上続くことになります。 ただし、その間、ロシア以外の国、たとえばヨーロッパ、南米、アジアなど、 今までチェスが弱かった国から強い選手が多く出てくるようになり、 チェスの普及は世界規模で進みました。特に中国とインドの台頭は目覚しいものでした。

   1999年の国際オリンピック委員会(IOC)理事会で、チェスは世界のメジャースポーツ30種の中に加えられ、 170カ国近い参加国を持つ世界チェス連盟(FIDE)は、IOCの加盟団体となりました。 さらにアジア大会においては、2006年、第15回大会(ドーハ)から、レスリング、水泳などと共に チェスが正式種目となりました。 これはアラブ、東南アジアにチェスが普及していることが大きい理由でしょう。 こうしてチェスは競技人口、書籍発行数から言えば世界1の盤上ゲームになりました。 (対抗できるのは中国の将棋「象棋」だけ) また、アフリカにも普及しはじめており、チェスが、「サッカー以外で世界1普及している競技」 であるという人もいます。

日本のチェス界  もくじにもどる

 日本へは8世紀頃にチェスの原型が伝わったと言われています。 これを改良したのが今の将棋ではないかと言われています。 たとえば、将棋の角行は、もともと象という字を略して角としたものです。 角行は、チェスのビショップ(ロシア語では今でも象と呼ぶ)と動きも名前も一致します。 さらに多くの証拠から将棋がチェスから派生したことは疑いのない事実でしょう。 つまり同じ共通の祖先を持つゲームなのです。

 大正の終わりから昭和にかけて、主に日本の将棋のプロたちによってチェスが紹介されてきました。 チェス普及に努力された坂口允彦(北海道日高町出身!1947年日本チェス連盟を結成)さんのような方もいました。 しかし、チェスは、「西洋将棋」と呼ばれて、トランプ、モノポリーなどとともに、 単に西洋の遊戯として紹介されることが多かったのです。将棋に劣るという議論も盛んです。 今でも、チェスは西洋人が行う将棋遊びという方もいらっしゃり、がっかりします。

 1967年、日本チェストーナメント協会が設立され、翌1968年には国際チェス連盟の75番目の加盟国として認められ、 同年、日本チェス協会(JCA)が発足しました。これには将棋界出身でない松本康司(FIDE名誉会員)さんらの 多くの方の努力がありました。今は渡井美代子さんがその遺志を引き継いで現在に至っています。 いろいろ議論はあると思いますが、このお二人の貢献は少なくないと思います。

 JCAでは、世界選手権決定戦(個人戦)及びチェスオリンピアード(団体戦)に出場する日本選手の選考会を兼ねて、 全日本選手権競技会を1969年より毎年開催しています。

 最近、将棋プロの羽生さん、森内さんらの真剣な取り組みが、紹介されています。羽生さんはチェスを勉強して、 FIDEマスターの位を取得しました。また、2005年全日本チャンピオンには、史上初めて高校生(小島慎也さん)が 日本1となりました。(以後2009年現在に至るまで圧倒的な力を誇っています)

 チェスはコマーシャル、映画、アニメ、ニュースなどに取り上げられ、たまに注目されることはありますが、 日本で流行したことは一度もありません。今だにチェスが、真剣に取り組む競技だと認知されていません。 日本は、世界中が驚くくらいの「チェス後進国」だといってよいでしょう。

 希望はあります。ネット、映画、アニメからチェスを知る人も多くなり、少しずつですが、 日本でもチェス競技人口は増えているという事実。(2008年5月5日に選手が130人集結!) そして地方やインターネットからチェスを盛り上げる活動が起こりつつあることです。 若い日本のプレーヤーのレベルはすでにFMクラスを越え、IMレベルに到達しつつあります。 日本のチェスは、今後さらに発展していくことでしょう。

競技としてのチェス  もくじにもどる

 チェスを単に遊びとしてやることは知られていますが、「競技」として行うという世界があります。 競技として行うことで、音楽や、芸術と同じように、言葉や文化がちがっても、チェスを通じて、 世界中の人たちと交流することが可能です。

 FIDE(世界チェス連盟)というIOC(オリンピック委員会)にも認められた大きな組織があり、 世界160カ国以上が参加し、同じルールのもとでゲームをしていることは、日本であまり知られていません。

 一番盛んな国はロシア、ハンガリーなどの東欧ですが、ヨーロッパ、北米、南米、アラブでも盛んです。 また、中国、インドなどのアジア諸国への普及は目覚しく、欧米に肩を並べるようになりました。 最近はイスラム諸国、アフリカへの普及が広がっています。 チェスは、全世界で行われている唯一の盤上競技です。

チェスはスポーツか?  もくじにもどる

 チェスはスポーツだ、そうでない、どちらも一理あります。

 しかし、日本ではチェスがスポーツと言うと、「チェスは遊びだ」、「無理がある」という反応が多く、 その議論にもならないというのが現実です。周囲の人に話してみてください。おそらく、 私の場合と同じように一笑にふされるのが落ちでしょう。 日本人はスポーツを運動だと考える人が多いのです。さらに、盤上遊戯と見られている囲碁や将棋と比較してさえ、 チェスを格下と考えるのが日本です。チェスがスポーツと言われないのは当然です。

 チェスは練習によってテクニックを磨き、精神を鍛え、その成果を試合でぶつけ合うことができる、 奥が深いゲームです。ですから、実力のない人がある人に勝つ可能性はほとんどありません。 このような要素を持つ競技を「スポーツ」という定義があります。 その証拠に、チェスはIOC(オリンピック委員会)に、スポーツと認められています。

 日本ではスポーツは運動と訳されますから、チェスはスポーツでないというのもわかります。 確かにチェスは運動ではありません。しかし、運動がスポーツなら、アーチェリー、ピストルなどは、 どうしてスポーツなのでしょうか。 チェス同様に腕、指しか動かさないではありませんか!

 日本以外の国では、日本とちがって、チェスがスポーツかどうかの議論が成り立ちます。 海外では、少なくともチェスが「頭脳スポーツ」と呼ばれることは議論の余地がないでしょう。

 2006年ドーハ開催予定のアジア大会では初めてチェスが正式種目に採用されました。 日本では驚かれる方が多かったようですが、もともとチェスは当初からオリンピック種目の候補だった そうです。2006年、アジア大会のチェスを報道したNHK番組のジャンルは「スポーツニュース」でした。 これは日本のチェス界にとって、画期的なできごとだったといえます。

チェスと将棋  もくじにもどる

 将棋とチェスはよく比較されます。どちらもすばらしいゲームですし、ルールが似ています。

 ひと昔前、チェスは西洋将棋と呼ばれました。これはチェス愛好者にとってうれしくありません。 (反対に将棋だってjapanese chessはいやでしょう。shogiです!)むしろ、 中国のように国際将棋と訳して欲しかったと思います。

 チェスは競技人口が将棋と比べてケタちがい(3桁ちがい!)です。 ですからトップの実力は途方もない。将棋でいう名人が数百人いると、 ぜひ想像してみてください。その天才たちの中で1番を争うのがチェス界なのです。

 祖先が同じゲームなのでルールはよく似ていますが、実際に両方をやってみると チェスと将棋はまったくちがうゲームです。 駒を貼ることができるできないがゲームを決定的にちがうものにしています。 私の知る限り、将棋のプロさえ、チェスでは地方大会でも勝つのは困難です。

 ただし、将棋、囲碁が上手な方は、上達がかなり早いのは事実です。 将棋ファンにはおなじみの羽生さんはチェスに真剣であり、 国籍日本人としてはおそらく最高のレイティングを持つ方です。 しかし、それは、彼がチェスをまじめに勉強した結果であり、決して将棋が強いからではありません。

 その証拠に他の将棋プロはそのレベルに達していません。また、始めは羽生さんも、 チェスを教わったときに全然勝てなかったと彼自身が告白しています。

 とはいえ、今やチェスでFIDEマスター(奨励会員クラス?)の称号を持った強豪です。 (さすが羽生さんですが、まだまだ世界チャンピオンには挑戦できません) 羽生さん自身もチェスと将棋は「まったくちがう」とおっしゃっています。

 ですから将棋ファンの方には、ぜひチェスに挑戦されることをお勧めします。 きっと将棋を外から見たすばらしさがわかるでしょう。そしてチェスのすばらしさも!

チェスをやってみませんか?  もくじにもどる

 チェスの魅力とは何でしょうか? 以前、新聞の取材で問われて なかなか答えられず、困ったことがあります。本当に何なのでしょう。

   チェスの駒や雰囲気がすてきだというのは、もちろん大きな魅力ですが、 それだけではありません。(それが世間では一番の魅力に思われていますけど…) そこで、このコラムで、私なりにチェスの魅力をまとめてみました。

 まず、チェスの技術には、何者にも変えがたい美しさがあります。その美しさは、 単純なルールの上にそびえる奥深い論理の城であり、それが指し手となって 駒の動きに表出してくるのです。 論理をつむぐ技術を手にして初めて勝てる競技、美しく戦わないと勝てない競技、 それがチェスだと思うのです。私にとってはそれが一番魅力的です。

 また、チェスはアマもプロも棋譜をつけますが、そのことはチェスを単なる 勝負以上のものにしています。なぜか将棋、囲碁では棋譜をつける習慣がありません。 チェスでは、たとえ勝っても、悪い手が多いなら、チェスのゲームとして 価値が低いですし、負けても、ひとつでも良い手があるなら評価されます。 チェスは、今の自分ができる一番良い指し手を探すゲームであり、 レベルが低くても、そのレベルで良い手を追求できる競技なのです。 これがチェスの魅力のふたつ目だと思います。

 さらにチェスは盤上ゲーム最大の圧倒的な競技人口を持っています。 チェスは常に海外とつながっています。言葉や文化がちがってもチェスのルールは 世界共通ですから、チェスを通じて本物の国際交流ができます。 加えて、レイティングというシステムで、遠く離れた者どうしが同じ土俵で 競い合うことが可能です。どんなにコンピューター・ゲームが盛んになっても、 やはり人間は人間と交流することが一番楽しいし、より豊かな経験値を持って 人生を送ることができるのではないでしょうか。

 個人的には以上の3点がチェスの魅力ですが、次の「宣伝文句」もあります。 「チェスによって論理的思考力と忍耐力、スポーツマンシップが身につく」…。 厳しい試合に勝つには、自分の限界を要求され、自分の心を磨くことになります。 もうひとつ、語学の必要性を痛感したりします。私はチェスを研究する必要上、 英語、ロシア語を学びました。受験英語しか知らなかった私が、会話、読み書きが できるのはチェスのおかげです。それらはうれしいチェスの副作用でしょう。

 私が考えたチェスの魅力は以上ですが、しかし、自分が愛しているものに、 こうして言葉を重ねれば重ねるほど真実から遠ざかっていく気がするのはなぜでしょうか。 結局、本当にわかってもらうには、実際にあなたが体験していただくより他なさそうです。

 あなたも頭脳スポーツとしてチェスをやってみませんか?

JCA函館支部  もくじにもどる

 2001年、以前から函館でチェスの普及に熱心であった、塾講師、高佐一義さんらの努力で、 函館チェスクラブが設立されました。その母体は函館ロシア極東大学と、未来大学の交流戦です。 このような地元の方々の下地がなければ今のチェス教室開催はあり得なかったでしょう。

 今まで初心者を教えることに無関心だった私は、自分の子どもが函館チェスクラブ主催の チェス大会に出て喜んでいるのを見て、本物のチェスを教えたいと思うように なりました。これがひとつの大きな大きな転機だったと思います。

 始めは、そこに集まる子どもたちのうち、2人を、 私が個人的に教えていましたが、私の函館転勤を機に、定期的に行うようになりました。 当初は個人宅でおこなっていたのをYWCAでやりはじめたのが2006年からです。 これが函館チェス教室です。しだいに人数が増えていき、教室が手狭になったので、 2007年から、場所を花園団地集会所に移し、現在に至っています。

 2006年9月、本物のJCAの公式戦を函館で行いたいと考え、JCAからの要請もあり、 以前からあった函館チェスクラブとは別に、 函館チェスサークル(JCA函館支部)を設立しました。函館チェスサークルは 当初は特に総会、役員会などを持たず、公式戦を開催するためだけの組織でした。 しかし、2008年から大人の方々も入会しはじめ、組織的にも整備され、少し体裁が 整ってきました。今はこのサークルをどうやって存続させるかが課題です。

 函館チェス教室は、函館という北海道の片隅で本格的なチェスを学べる教室です。 ささやかですがいつも楽しくやっています。現在20名以上の会員数です。 レベルも決して低くないという自負があります。 ここから日本を代表する選手が出てほしい。夢のような話ですが…。

 サークルがJCA支部という性格上、誰でも真剣に チェスをしたい方なら入会を歓迎します。チェス教室に参加する必要はありません。 別に月に4回の例会を設けています。初心者でも才能がなくても熱意があれば大丈夫。 ぜひ見学しにいらしてください。

チェスの教材  もくじにもどる

 日本において、チェスは競技としてマイナーです。ですから、普及するときに、 チェスの紹介本以外の書籍がほとんどないことが障害になります。 たとえば、子どもや初心者に適切な、簡単な問題集がありませんし、 少し強い方がエンディングを学びたいと思っても、外国語(英語)ができないと 手も足も出ません。 その現状を考えるとここの通信と教材も利用価値があると思い、公開しています。

 活動記録としての通信と、「チェスのサプリ」という問題集があります。 特にチェスの「詰め将棋」を目指した「チェスのサプリ」は、自信作です。

 通信と教材は、ブックスをご覧ください。

スイス式大会  もくじにもどる

 チェスの大会にはいろいろな種類があります。 たとえばラウンド・ロビン(総当たり)、ノックアウト(日本でいうトーナメント)など。 その何種類かのうちチェス界で普及している大会方式がスイス式(Swiss system)です。 スイスで発明され、主にアメリカ合衆国で普及し、発展してきました。 スイス式とは、短時間で総当り戦に近い順位をつける工夫です。

 単純に言うことはできないのですが、以下、簡単に手順を説明します。 1回戦目はシード順の上位と下位が対戦します。2回戦では同点者どうしが 対戦し、次回戦以降もできるだけ同点者が対戦するようにして、それをくり返します。 スイス式の最も大きな原則は、同じ相手とは2度と対戦しないことです。 相撲の当たり方はそれに近いものがあります。

 スイス式の欠点をあえて挙げれば、その運営が難しくて時間がかかり、中間の順位が不正確な ことなどです。クライマックスが最終局に来ないということも日本人的にはすっきりしません。 また、負けたら抜ける方式ではないので、負け続けても出場し続けることになり、 参加者は棄権しない精神力とマナーが求められます。

 しかし、それらの欠点を考慮しても、短時間で順位がつく方式として他に例がないくらい 利点が大きく、スイス式は優れた方式と言っていいでしょう。 スイス式が世界中に急速に普及したのは当然のことです。 また、それぞれの事情にあったように改善されたスイス式もあります。 日本でもアマチュアの囲碁、将棋大会、あるいは各種運動系スポーツ大会に採用されています。 (残念ながらその多くはまちがって採用されています)

 スイス式の欠点を補うために、同点者の順位を決めるための方法として、 タイブレークがあります。また、コンピューターを使い、 誰でも早く正確にスイス式が運営できるようになりました。

 なお、海外のスポーツ界で、トーナメント(tournament)というと、 総当り(round robin system)か、このスイス式(Swiss)を指すのが普通です。 しかし、日本では勝ち上がり式がトーナメントと言われていて、 まったく正反対の意味になるので注意が必要です。 これらを混同している情報が、大手新聞、テレビなどのマスコミでもしばしば ありますので、それを発見できるとおもしろいでしょう。 (この私自身が当初は混乱していました)

 つまり、日本でいう「トーナメント」、つまり勝ち上がり式は、 海外でノックアウト方式(Knock-out system)と 呼ばれ、日本でいう「リーグ戦」が海外の総当りか、スイス式です。

タイブレーク  もくじにもどる

 スイス式大会では順位をつけなくてはいけない同点者が出やすくなります。 そこで考えられたのが、次のタイブレーク方式です。

 ブッフホルツ(Buchholz) ……………対戦相手全員の得点合計、別名ソルコフ(Solkoff)
 メジアン(Median Buchholz)…………ブッフホルツと同じだが、最高最低の特異な相手は除く
 ベルガー(Belger)……………………勝った対戦相手の得点合計、別名ゾンネベルガー(SB)
 プログレス(progress)…………………全ラウンドの累計得点を合計、別名累計式(cumulative)
 相手合計(Opponent's Rating Sum)…対戦相手全員のレイティング合計
 勝数(number of wins)………………ドローを除いて勝った数

 さらに多くありますが、それぞれ一長一短です。 多くのチェス大会では、@ブッフホルツ(あるいはメジアン)、 Aベルガーを組み合わることが多いようですし、最善と言われていますので、函館もそうしています。 (JCAは、なぜか相手レイティング合計を採用していましたが、今では函館と同じになりました) プログレスは計算が楽なので、米国のアマ戦、日本のアマ囲碁、将棋大会などに多く採用されています。 ただし、チェスの場合、プログレスは最終戦直前に取引きをされやすいという欠点があります。

 得点の同点者は、このタイブレークの値が大きい者の順位を上にします。 ただし、絶対に正しいタイブレークはないということは認めるべき事実であり、 コンピューターを使ってのペアリングさえ、最上位と最下位以外の順位は不正確です。 ですから、最善のタイブレークもサイコロで決めるよりましな程度考えた方がいいでしょう。 理想を言えば、ラウンド数を増やすことが一番の解決策です。

 よって、どうしても賞を決めるなどの理由がない限り、同点者は同順位とするのが無難です。

象棋の競技人口は世界一?  もくじにもどる

 ある象棋関係のサイトでは盛んに「世界一の競技人口」として宣伝していました。 これは本当なのでしょうか?

 中国にも将棋があり、象棋(シャンチーともいう)という名で、 主に東南アジアに普及しています。象棋の競技人口は、唯一チェスと比べられる盤上ゲームです。 これは日本人にとって意外な事実です。(残念ながら囲碁、将棋は桁違いに少ない!)

 インターネットで調査してみると、チェス、象棋とも競技人口はともに 約5億人としている情報が多く、チェスも象棋も「世界一」という情報があります。 どちらに軍配があがるのか、断定は難しいでしょう。象棋はとてもすぐれたゲームだと 思いますが、「世界一の競技人口」は少し言い過ぎであり、証拠はないと思われます。 確かにひと昔前は象棋だったかもしれませんが…。

 実際、どうやって競技人口を数えたのか、「競技している人」の定義はと考えると、 それぞれが発表している数の信頼度は大きくありません。

 より多くの国々で認知されているゲームという点で言うなら、 象棋より圧倒的にチェスが優勢です。さらに、発行された書籍の数、ソフトウェアの数は チェスが抜群です。これに反論する人は誰もいないでしょう。ある中国の象棋関係者が近年の チェス普及で象棋人気が落ちていることに危機感を持っているという談話もあります。

 2005年、IMSA(世界マインド・スポーツ協会)が設立されました。 卓上ゲーム5種目が集まって2008年に 第1回世界大会が北京で開かれます。 その紹介の中で各種目の競技人口にふれた部分がありました。いわく…

 ドラフツ:競技人口4千万人、 57カ国
 囲碁:  競技人口6千万人、 68カ国
 ブリッジ:競技人口 1億人、130カ国
 象棋:  競技人口 2億人、 20カ国
 チェス: 競技人口 3億人、161カ国

 これは象棋関係者も含めて算出された最新の数値なのです。 ところが、この象棋の数値は後で5億人に直されていました。理由は、…不明!

もう一度問います。本当に象棋の競技人口は世界一でしょうか?

函館チェスサークル >トップへ