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函館チェス大会のご案内(1 再掲載)  [2011hako] >トップ

クリスマス

 FIDEマスター小島慎也さんが今年も参加!

   小さいけれど本格的なワンデイ・トーナメント!

      初めての方も安心できるアット・ホームな大会!

         ジャパンオープン圧勝の小島さんが今年も参加!

 レベルは日本一(?)でも、初心者にやさしい大会です!

ハリストス正教会
大 会 名: 第6回函館チェス大会
日  時: 2011年12月10日(土)午前10時~午後7時
場  所: 函館地域交流まちづくりセンター2階
大会形式: クラス別4ラウンド・スイス(Swiss-Manager)
試合形式: 20分+30秒/手累加、すべてJCA公式戦
参加資格: JCA会員(当日入会可能)

 函館のクリスマスを満喫♪

   有名なクリスマス・ファンタジーの真っ最中♪

      観光名所のど真ん中、市外の方優遇♪

         スタッフ一同が心をこめて運営させて頂きます♪

ツリー



 すぐにエントリーしましょう♪

 参加には前日までに事前エントリーが必要です。

Eメール(kamiyakumo@gmail.com)か、お電話(0138-53-1028 山田 夜8時~10時)をください。お待ちしています。

   【 エントリー・リスト(PDF) 】  【 大会要項PDF 】  【 会場案内

ウニフェ2011 大会レポート(4) 7ラウンド [2011.unive04rd7] >トップ

ウニフェ [ PDF版 >>> ] [ 駒が動く [ Viewerチェス盤 ] でご覧ください]

 一番の勝負どころ

Yamada,Kohei (2093) - Van Foreest,Jorden (2153)
15th Unive Open (7), 20.10.2011

 このラウンドが今大会一番の勝負どころです。5R、6Rと良い内容で1.5Pを取って白番で上位者と当たります。

 その相手は、5Rで対戦したVan Foreest, Lucas君のお兄ちゃん、12歳のVan Foreest, Jorden(ファン・フォレースト・ヨルデン)君です。第2回のレポートで紹介したように、オランダU12の(そしてU14でも!)ランキングトップです。彼のHPによると世界の小学生(12歳以下)の中でも、上から数えると12番目なのだとか!

 以前はIM Willemze(IMヴィレムゼ:僕が1ラウンドで対戦したIMすなわちインターナショナル・マスター)に教わっていたようですが、現在のトレーナーはGM Ernst, Sipkeとのこと。


写真は大会公式ページより。チェスも強いですが、青い瞳が印象的なイケメンです。 …もちろん右の方がですよ?

 この大会では1ラウンドでIM Van Kampen, Robin(ファン・カンペン,ロビン 2529: この大会の準優勝者)、2ラウンドでIM Sachdev, Tania(サクデフ,タニア:インドの女子では最も期待されている選手の一人です)とそれぞれ引き分けており、レーティング以上の強敵です。勝負のラウンドを戦うのに、これ以上の相手はいません。

 ペアリングが決まってからこの対戦は非常に楽しみで、当日念入りに準備をした後、少し寄り道しながら会場入りして気持ちを落ち着けます。

1.d4

 前のラウンドは序盤の準備が上手くはまったように感じていましたが、彼は対策しづらい相手でした。豊富なレパートリーを持ち、どちらかというと相手をみて指す手を選ぶタイプという印象を受けました。また僕は彼の弟と対戦しているわけですから、僕の情報はある程度知られていると思ってもよさそうです。

1...d5 2.c4 c6 3.Nf3 Nf6 4.Nc3 e6 5.Bg5 dxc4!?

 これがやや意外な選択でした。Lucas君と同じように5.Be7だと考えていたからです。ですが、過去にこの手を指していたのは調べているので、驚くには当たりません。

6.e4 b5 7.e5 h6 8.Bh4 g5 9.Nxg5 hxg5 10.Bxg5 Nbd7 11.exf6 Bb7 12.g3 c5 13.d5 Qb6 14.Bg2 0–0–0 15.0–0 b4


図1 Yamada-Van Foreest,J 白番 15...b4まで

 知らない人にとっては難しい手が続くかもしれませんが、全て定跡手順です。定跡研究が好きな人にとっては白黒どちらをもっても武器になるラインだと思います。

16.Na4

 ここでは 16.Rb1 という手もかなりの人気があります。一例は 16...Qa6 17.dxe6 Bxg2 18.e7 Bxf1 19.Qd5 となり、本譜の順と比べてどちらがいいのかは非常に難しい所ですが、僕は準備してきたとおりにNa4を指します。

 チェスプレイヤーの密かな楽しみ

16...Qb5 17.a3

 どちらもここまでほぼノータイムで指していましたが、この手をみて相手が考え始めます。どうも感想戦の口ぶりからすると、16.Rb1 の方をメインに用意してきていたようです。一方僕の方はプレパレーションから外れるには、まだ大分先がありそうでした。

17...Ne5!?

 Jorden君の作戦家らしいところがでた選択です。彼は過去にここで 17...exd5 と指していました。僕の予定はその後 18.axb4 cxb4 19.Bf4 と ギリ vs. スメーツ戦のように進めるつもりでした(アニッシュの日本語版HPに日本語でゲーム解説があります)。 おそらく彼は、僕がノータイムで指してくるのをみて早めにメインラインを外そうと試みたようです。それは半分正解で、僕は彼の指した Ne5 ラインをそれほど詳しく調べていたわけではありませんでした。 僕は記憶を掘り起こし、幸い時間をかけずにあるゲームを思い出しました。

18.axb4 cxb4 19.Qd4 Nc6 20.Nb6+!?


図2 Yamada-Van Foreest,J 黒番 20.Nb6+まで

 この定跡は数ある定跡の中でも、特に激しく人気のある定跡として知られています。そのため、このゲームにはギャラリーが沢山いました。その場で考えた手ではありませんが、たくさんのギャラリーの前でピースをただ捨てするのはチェスプレイヤーの密かな楽しみのひとつ(?)です。

 実はここではおどろくべきことに 20.dxc6!? という手も成立します。20...Rxd4 21.cxb7+ Kb8 22.Be3 e5 23.Rfe1 Bd6 24.Rec1 のような感じで、駒損ながら指せなくはない、といった感じの形勢でしょう。

20...axb6 21.dxc6 Bxc6

 いくら天才少年といえど

 20手目のナイト捨てが効いていて、ここではクイーンを取ることは出来ません。21...Rxd4? 22.cxb7+ Kc7 23.Ra8 Bd6 24.Rxh8 Kd7 25.Rc8 となってこれは白勝ちです。

22.Bxc6 Qxc6 23.Qg4 Bc5 24.Ra7!


図3 Yamada-Van Foreest,J 黒番 24.Ra7まで

 黒のキングを一段目に縛り付けて、弱点であるf7のポーンを狙います。ここまで僕は1手平均30秒くらいで指していたので、持ち時間は減っていませんでした。一方相手はこのあたりまでで20分ほど消費しており、さらにここから大長考に入ります。局面そのものはイコールだと僕は思いますが、実戦で初めてこの局面を見て正確な手を指すのは、いくら天才少年といえど難しいのではないかと考えていました。

24...c3?

 30分近い大長考の後、彼が選んだのはパスポーンを作っての攻め合いでした。この手はほとんど考えていませんでしたが、直感的に悪手だと思いました。

 僕が17手目で思い出していたのは2010年、やはりオランダで行われたWijk aan Zee(ヴァイカンゼー)のトーナメントで指されたカールセン vs. スメーツのゲームでした。そのゲームは、24...Rd7 25.Rxd7 Kxd7 26.h4 Kc7 27.h5 と進み、最終的にカールセンの勝ちになりました。 僕はこのゲームを 26.h4 まで思い出していたのですが、試合中 26...Kc7 の後にどう指すのかわからず会場を歩き回りながらその後の展開を考えていました。僕とJorden君が共に読んでいたのは 26...Kc7 のあと 27.Bf4+ Kb7 28.Qg7?! という手でした。Jorden君はこれで自信がないと言っていましたが、これは 28...Qe8 と戻れば何もありません。

 いずれにせよ、黒はf7のポーンを簡単に手放すべきではありませんでした。このおかげでe6のポーンが弱くなってしまうためです。これが後に効いてきます。

25.bxc3 bxc3 26.Rxf7! 当然取る一手です! 26...c2 27.h4!


図4 Yamada-Van Foreest,J 黒番 27.h4!まで

 基本的なアイディア

 この手もこの定跡では基本的なアイディアです。Rxh2 というサクリファイスを消しつつ、後でh ポーンを伸ばしてパスポーンとして使っていきます。さらに h2 にキングの逃げ道ができたのも大きなポイントでしょう。

 27.Ra1?? は次に 28.Qxe6! Qxe6 29.Ra8# というメイトを狙っていますが、27...Bxf2+! 28.Kxf2 Rxh2+ 29.Ke3 Qc3+ 30.Kf4 Qd4+ 31.Kf3 Rf2# となって逆に自分がメイトになってしまいます。
試合中一瞬考えたのは a6 でのチェックと c2 ポーン取りの両方を狙った 27.Qe2? ですが、これは黒の狙いにはまります。27...Rd1!


変化図1 analysis diagram 白番 27...Rd1!まで

 これが黒の狙いのタクティクスです。Qa6+ はまだメイトにならないのがポイントです。28.Qxc2 ( 28.h4 も考えられるところでしょうが、勝つのは難しいでしょう 28...Rhd8 29.Qa6+ Kb8 30.Bf4+ Bd6 31.Bxd6+ R1xd6 32.Qa7+ Kc8 33.Qa6+ Kb8(互角);まちがって 28.Rxd1?? と取ってしまうと突然負けになります Bxf2+!! 29.Kxf2 Rxh2+ 30.Ke3 Rxe2+ 31.Kxe2 Qg2+ 32.Ke3 cxd1Q これでメイトが避けられません!) 28...Rxf1+ 29.Kxf1 Rxh2 となり、これはもうイコールでしょう。

27...b5?!


図5 Yamada-Van Foreest,J 白番 27...b5!?まで

 これも面白い一手です。前述の Qg4-e2-a6 という筋をじっと消して機を待ちます。

 27...Rd4 とすぐに指すほうがベターだったようです。28.Qe2 b5 29.Rg7! で白がよさそうですが、正直なところ試合中はこの順にあまり自信をもってはいませんでした。

 局後Jorden君、Thomas君(トーマス君:レポート1の写真の子です)と検討したのは、27...Ba3!? という手です。以下 28.Ra1 ( 28.Bc1?! には 28...Rd1! 29.Rxd1 cxd1Q+ 30.Qxd1 Bxd1 31.Qe2 白やや良し [Jorden]だそうです。が、実は28.Bf4!で簡単に白の勝ちだったのでした。3人とも 28...Bd6 と戻れない《e6が落ちる》ことに気が付かなかったのです…) 28...Rhe8 この受けを発見したのはThomas君だったと思います。しばらくの間、良い手が見えず頭をひねっていたのですが、若き二人はほどなく正解を発見しました。29.Ra7!

28.Rc1?

 ここで長考し安全に指そうとルークを回りましたが、これはこの定跡の精神に反します。厳しく 28.Bf4! と追求して簡単に白勝ちでした。28...Rhf8 29.Rc7+ Qxc7 30.Bxc7 Kxc7 31.Qe4(白勝勢)今考えるとなぜ気づかなかったのか全くわかりませんが…、これが実戦の怖さというところでしょうか。

28...Rd4!

 黒は決め手を指される前にカウンターに転じるしかありません。28...Ba3?? は29.Rxc2! Qxc2 30.Qxe6+ Kb8 31.Qb6+ Ka8 32.Qa7# です。

 クイーンとれたよね?

29.Qe2 Rhd8?

 残念なことにこの手が致命的な敗着になってしまいました。ここは先に 29...Rc4 とポーンを守る手が絶対で、その手には 30.Kh2! という手を用意してはいたのですが、勝ちにするにはまだいくつも山が会ったはずです。

30.Qxc2!+- Rc4

 おそらく彼もここにきて何か間違えたことを悟ったことでしょう。僕が最初恐れていたのは30...Rd1+!? というただ捨てですが、これは冷静にやれば受けきりです。31.Rxd1 Bxf2+ 32.Kh2! Qxc2 33.Rc1(白勝勢)

31.Qe2!


図6 Yamada-Van Foreest,J 黒番 31.Qe2! まで

 想像ですが、この手がJorden君の見落とした手でしょう。遠くg5のビショップが c1 のルークにひもをつけています。

31...Rxc1+ 32.Bxc1 Bd4 33.Bg5 b4 34.Re7! e5 35.f7 b3 36.Re8

 ピースを交換してパスポーンを落とせばもう難しい所はありません。ですが、実は 36.Qd3!! という地味な手が b3 取りと Qf5+ を見てもっとも速い勝ちでした。

36...Rxe8 37.fxe8Q+ Qxe8 38.Qc4+ Kd7 39.Qxb3

 局後Jorden君の元コーチのKnolさんに呼び止められました。

 「クイーンとれたよね?」

 難しくも楽しいゲーム

 なんと、39.Qb5+! で黒のクイーンがとれていたのです。パスポーンさえ取れれば、と安心しきっていたのが原因だったわけですが、どんなときでも最善の手を探す努力はしなければいけませんね、反省です。

39...Qa8 40.Qf7+ Kd6 41.Be7+ 1–0


図7 Yamada-Van Foreest,J 黒リザイン 31.Be7+ まで

 いずれにせよ白の勝ちには変わりありません。41...Kc6 には Qf3+ があるので、黒はクイーン交換を受け入れるしかありません。Jorden君はここでリザインしました。

 こうして楽しみにしていた一戦は、難しくも楽しいゲームになりました。そこに勝ちという結果もついてきたので、試合が終わった後は幸せな気分でした。次のラウンドはまたしてもオランダ期待の若手、Meurs, Tom(モイルス,トム)に黒番でした。

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 いつか日本でも

 前回からチェスの話が続いたので、会場の話もしておきましょう。


試合前の会場。勝ち続けると左のほうはマスターがひしめきあう上位ボードです。

Openは一階の大ホールで行われます。試合は午後2時開始なのですが、早い人は12時頃に会場入りし食堂で昼食をとったりしています。若い人達は仲間うちでBlitzをやることも。僕も試合前にNikky Lawsに声をかけられて3局ほどBlitzを指したりしていた日がありました。
大抵のプレイヤーは試合開始15分ほど前に会場入りしてきます。ほとんどのトッププレイヤーはギリギリに来るのですが、リスト1のTiviakovはかなり早く会場入りしコーヒーを飲んでいました。


会場の掲示板には新聞記事の切り抜きと、大会の経過が貼り出されます。

 海外の大会は規模が大きいので、会場があれば良いというものでもありません。車での送迎やHPの更新、棋譜の入力とアップデート(今大会は次の日には大体の棋譜がインターネットにアップされていました!)などなど、様々な人達の協力で開催されています。今大会でもスポンサーにはホテルやタクシー会社、街のデパートなどが名を連ねていました。いつか日本でもチェスがメジャーになって、こういったFIDEトーナメントが開けたらいいですね!

 美しいフィニッシュを発見

 ところで、このラウンドで印象に残っていることがもう一つあります。それは僕達の対局の隣で指されていたKnol, Geon(2137)-Beerdsen, Thomas(2019)のゲームです。27手目から始まる白のタクティクスに注目してください。

Knol,G (2137) - Beerdsen,T (2019)
15th Unive Open Hoogeveen NED (7), 20.10.2011

  1. e4 c5 2. Nc3 a6 3. g3 d6 4. Bg2 Nc6 5. d3 g6 6. f4 Bg7 7. Be3 Nf6 8. h3 Rb8 9. Nge2 Qc7 10. O-O O-O 11. Qd2 b5 12. Rae1 b4 13. Nd1 Bb7 14. g4 Nd7 15. c3 bxc3 16. bxc3 Nb6 17. h4 Qd7 18. Nf2 Ba8 19. g5 Na4 20. Bh3 Qc7 21. Nd1 f5 22. exf5 gxf5 23. d4 Na5 24. d5 Nc4 25. Qc2 Nab2 26. Bxf5 Nxd1 27. Bxh7+ Kh8 28. Qg6


図8 Knol,G-Beerdsen,T 黒番 28.Qg6まで

 28...Ndxe3?! [結果的に言えば駒得よりも生き残ることを優先すべきでした。28...e6 29.Qh5 Bh6!!=が最善でしょう。]

 29. Qh5 Rf6? [これが敗着ですが、正しいディフェンスを探すのはマスターでも難しいかもしれません。29...Ng4! 30.Bd3+ Nh6 31.Bxc4 白良し]

 30. gxf6 exf6 [ここから華麗なタクティクスが始まります。]

 31. Bf5+ Kg8 32. Be6+ Kf8 33. Qh7 Bxd5 [33...Re8には34.f5! という手があって白の勝ちには変わりありません。さて、この時僕のゲームは僕が 26.h4 と指し、Jorden君が長考しているところでした。僕は隣でこのゲームを見ていて美しいフィニッシュを発見しましたが、みなさんにも見えましたか? なんと黒キングはメイトになってしまいます! でも、どこで?]


図9 Knol,G-Beerdsen,T 白番 33...Bxd5? まで

 ベストゲーム賞

  34. Qg8+ Ke7 35. Qxg7+ Kxe6 36. Nd4+ [僕が読んでいたのは以下のメイトです。36.f5+ Ke5 37.Qg3+ Ke4 38.Nc1! Be6 39.Qg2+! Ke5 40.Nd3# パズルのようなメイトです!] 36... cxd4 37. f5+ Ke5 38. Qg3+ Ke4 39. Qf4+ Kd3 40. Qxd4+ Kc2 41. Re2+ Nd2 [黒キングはついに c2 の地点で力尽きました。] 42. Qxd2# 1-0

 僕のゲームとこのゲームが並んでいたこともあり、このラウンドの下ボードでは、僕達のテーブルが一番観客を集めていました。そしてこの美しいゲームはこの大会のベストゲーム賞を受賞しました!

(PGN形式の オープンクラウン の各グループ棋譜がここからダウンロードできます。特に上のゲームの棋譜が欲しい方は ここ をクリックしてください。)

ブリッツキング・チェス大会2011(2) [2011.11.23] >トップ

 写真ギャラリー

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※ 上の4つはチェス教室函館の様子

11月13日、20日まちセン例会 [2011.09.23] >トップ

 公式戦結果


例会公式戦記録 2011.11.13
ボード 白 番 黒 番 結 果
 金城 透弥   金城 琉菜   0-1
 金城 康弘   高橋 栄三   1-0

★ 金城琉菜ちゃん、透弥君がブリッツで山田に初勝利。将来が楽しみです!

例会公式戦記録 2011.11.20
ボード 白 番 黒 番 結 果
 金城 透弥   高橋 栄三   1-0
 金城 康弘   山田 明弘   0-1
 金城 琉菜   山田 明弘   0-1

ウニフェ2011 大会レポート(3) 6ラウンド [2011.unive03rd6] >トップ

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 序盤の駆け引き 

 Van Weersel,Arlette (WIM, 2191) - Yamada,Kohei (2093)
15th Unive Open (6), 19.10.2011

 1ラウンドで GM Ernst, Sipke に圧勝し、一躍今大会の注目選手となった WIM Van Weersel との一戦です。黒番ながらぜひともポイントを取りたいところであり、前日と当日午前中は実戦に現れそうなラインを大体チェックしました。

 WIM Van Weersel, Arlette (ファン・ヴェールセル,アーレッテ 27歳):2008年にはDresden Olympiad、WMSGなど、2010年にはKhanty-Mansiysk Olympiadでオランダ女子代表としてプレーしていました。

 前回書いたとおり僕はこの準備に自信を持っていたので、試合が始まる前からもう勝ったような気でいました。今回は序盤の駆け引きについても少し触れていきましょう。

e4 e6 2.d4 d5 3.Nc3 Bb4 4.e5 c5 5.a3 Bxc3+ 6.bxc3

おそらく彼女も相当準備をしてきたでしょう。ここまでは互いの想定通りです。この局面は僕も海外大会で何局か経験済みです。この局面について彼女が(おそらく)手に入れていた情報は次のようなものだったはずです。


図1 Van Weersel-Yamada 黒番 6.bxc3まで

 □相手(つまり僕ですが)はFrench defenceを得意とするプレイヤーであり、3.Nc3 には 3…Bb4 と指してくる(註:選択肢としては 3…Nf6 もあります)。
□この局面で相手は過去に 6…Ne7 (vs Ahmed, A / WMSG Blitz Team 2008)と 6…Qc7 (vs Nepali, B / Asian Games Rapid 2010)を指している。さらに4ラウンドでも 6…Qc7 と指している(前回の記事参照)。

 こういった情報はChessbaseというデータベースソフトや、Ghessgames.comなどといったサイトで知ることができます。上の情報から、おそらく彼女はこの局面での指し手を 6…Qc7 (あるいは小さい確率で6…Ne7 )だと想定していたと思います。前日のうちに僕はこの局面で相手を驚かせるために、第3のカードを切るつもりでいました。

6…Qa5!

 いつでも相手が驚く手を指すのは楽しいものです。相手が考え始めたのをみて席を立ち、コーヒーを取りに行きます(ちなみにこの大会、プレイヤーにはホットコーヒーが無料で振舞われていました)。

 黒の支配下 

 この手そのものはかなり人気の高い手で、Moskalenko著「The Flexible French」あるいは「The Wonderful Winawer」でもかなりのページを割いて解説しています。僕も普段は 6…Qc7 がメインの武器ですが、こういった場面で取り出せるように大分前から研究していました(実際日本の大会では何局か指しています)。

7.Bd2 Qa4 8.Qb1

 黒はQa4と指すことで、後の a4~a5やBc1~Ba3 などクイーンサイドから動かれる手を消します。また、この手はc2のポーンもターゲットにしています。 白の Qb1 は初めて見た人は驚くかもしれませんが、この局面ではよく指される一手です。直接の狙いは次に Bb5 とやってクイーンを取ってしまうことです。

8…c4 9.h4!?

 黒は c4 と局面を閉じて両取りを防ぎます。これでクイーンサイドは黒の支配下に置かれたので、白は 9.h4 とキングサイドで主導権を取りに来ます。

9...Nc6 10.h5 h6 11.Qb2

 やや珍しい手ですが、僕がここまでほぼノータイムだったので、早めにこちらの準備を外そうとしたのでしょう(僕は前日にこの局面を見なおしていましたし、一方のVan Weerselはデータベースを見るかぎり、この形の経験は多くなさそうでした)。悪い手ではありませんが、手損になる可能性も大いにあります。

11...Bd7 12.Nh3!?


図2 Van Weersel-Yamada 黒番 12.Nh3 まで

 h4~h5とこの手の組み合わせはやや意外でしたが、いずれにせよ白にとって良いプランを見つけるのは簡単ではありません。 またb7のポーンは毒入りになっています。12.Qxb7? Rb8 13.Qc7 Qxc2! 14.Rc1 (14.Ne2? Qb2 15.Rc1 Nge7(黒勝勢) クイーントラップです!確認してみてください) 14...Qb2! 展開の差、クイーンの働き。形勢は明らかでしょう。

12...0–0–0 13.Be2 Nge7

 キングサイドでカウンター 

 この定跡で黒が目指す形が出来上がりました。クイーンが b ファイルにいるにもかかわらずクイーンサイドにキャスリングするのは怖い気もしますが、白のクイーンサイドは狭いので、ここから大軍が押し寄せてくることはありません。次に黒は、キングサイドでカウンターを仕掛けることを目指します。

14.Rb1 b6 15.0–0 Rdg8 16.Qc1 g6!?

 キングサイドをオープンしに行きます。16…f6 17.f4 Nf5 18.Be1 という変化も考えましたが、あまりぱっとしないように思いました。しかし本譜の順でもすぐに何かが起こるわけではなく、このあたりは手の選択が難しい所です。

17.hxg6 Nxg6 18.Kh2 Nh4 19.g3 Nf5 20.Bh5 Rh7 21.Bf4 Qa5 22.Qb2 Nce7(=)

 いずれにせよ、局面は完全にイコールになりました。序盤の準備の差で持ち時間には大差がついています。ここで僕はドローをオファーしました。序盤は上手く行きましたが、無理して勝つほど差がついたわけではありません。またここでドローを取れれば次は白で上位者に当たるのがほぼ確定ですから、その対局のために体力を温存しようとした意味合いもあります。 このままでは白はタイムトラブルに陥るのは必至でしたから、受けてくれるだろうと考えていたのですが…


図2 Van Weersel-Yamada 白番 22…Nce7まで

23.Qb4!?

 白を持った上位者 

 白をもった上位者が、そう簡単にオファーを受けてくれるはずもありませんでした。しかしこの局面で白をもって何かやりたいプランがあるとも思えません。またこの手に対しては次のような切り返しを用意していました。

23...Qa6!

 ここからの手順がこの定跡のポイントになります。

24.Ra1 Ba4!

 相手の手にのって黒のクイーンとビショップを入れ替えます。a4~a5 を防ぎ、白が気を抜いているとBxc2~Be4とビショップがセンターにやってきます。また、次に Nc6 と指すことで白のクイーンサイドからの反撃を、ナイトとビショップだけで全て止めることができます。そしてフリーになったクイーンを攻撃に使います。

25.Rac1 Nc6 26.Qb2 Qb7 27.Rce1 Qe7 28.Qc1 Kb7

 慌てず騒がずポジションの改善を図ります。

29.Qd2 Qf8 30.Rg1 Rhh8!


図3 Van Weersel-Yamada 白番 30…Rhh8まで

 この手もお気に入りの一手です。この手のアイディアは何でしょう?

 黒の優勢は明らか 

31.Ra1 Qg7 32.Raf1 Qh7

 これが狙いの一手で、hファイルに大駒を重ねつつ、遠く c2 のポーンを狙っています。

33.Bd1

 白は先にこれを防ぎますが、これで白の駒がクイーンサイドに入ってくることができなくなってしまいました。そこでもう一つのナイトも攻撃に参加させます。

33...Nce7 34.g4!? Ng7 35.Bg3 h5 36.g5 h4 37.Bf4 Nh5


図4 Van Weersel-Yamada 白番 37…Nh5まで

 クイーンサイドを制圧し、キングサイドに攻撃陣を送り込んで、黒の優勢は明らかになりました。しかしここで一つ問題があります。果たしてここから白が徹底的にディフェンスに回ったとき、黒の方に勝ちはあるのでしょうか?

38.Rg4 Nf5!

 相手が持ち時間切迫で苦しむ中、虎視眈々と勝ちのチャンスを待ちます。次の狙いは Nhg3! という飛び込みで、h3 のナイトが浮いているのを利用し、Nh5-g3-e4 というマニューバリングを狙います。

39.Rfg1!

 時間がない中冷静に受けてきます。これで 39…Nhg3? に対しては 40.fxg3 hxg3+ 41.R1xg3 Nxg3 42.Rxg3 で、これ以上の攻めがありません。

39...Qg6 40.R1g2 Rh7 41.Qc1 Rgh8 42.Kg1 a5 43.Qd2 Nhg3

 最後まで勝ちを探しますが、この手がそこまで強力でないことはわかっていました。

44.f3?!

 一瞬これはチャンスか、と思いましたが、それほどでもありません。しかし僕が読んでいた 44.Be3!? Nxe3 45.fxe3 Qf5 46.Qe1 という順の方がより安全だという気がします。ちなみにここでもこのナイトは取ることが出来ません。44.fxg3? hxg3 45.Nf2 gxf2+ 46.Kxf2 Rh3! となります。最後のRh3がうまい手で、白はこのあと有効な手を指すことが出来ません。黒はクイーンをもう一度クイーンサイドに持って行き、a3 のポーンを取ってしまえば十分勝ちが望める形勢になります。

44...Ne7

 優勢な局面からのドロー 

 白が攻撃を放棄してずっと受けに回っていると、優勢とはいえ最後の決め手を放つことが出来ません。例えばルーク2枚をクイーンサイドに振りなおして、Bd7~a5~b5 とついていくプランもありますが、h5 のポーンが取られてしまうと逆に白のカウンターをくらいかねません。

45.Rh2 Qg7 46.Qf2 Ngf5 47.Bc1 Ng6 48.Qd2 Rh5 49.Qf2 Bc6 50.Qd2 Ba4

 さすがに勝ちはなさそうだと考え、手堅く 0.5点をとっておくことにしました。

51.Qf2 Bc6 52.Qd2 Ba4 ½–½


図5 Van Weersel-Yamada 白番 50…Ba4まで

 優勢な局面からのドローではありますが、もちろん不満のある結果ではありません。終始楽しめたゲームで結果も悪く無いものでした。何よりこれで次の日は白で上位者と当たれるので、そこが今大会最大の勝負どころだと考えていました。

 またしても意外な当たり 

 夜発表されたペアリングを見ると、またしても意外な当たりでした。

28 Yamada, Kohei(2093) – Van Foreest, Jorden(2153)

 5ラウンドで当たったLucas(ルーカス)君のお兄ちゃん、Jorden(ヨルデン)君が次の相手でした。次回はこのゲームの解説です。

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ウニフェ2011 大会レポート(2) 4ラウンド [2011.unive02rd4] >トップ

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 研究合戦

Ootes,Lars (2340) - Yamada,Kohei (2093)
15th Unive Open (4), 17.10.2011

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nc3 Bb4 4.e5 c5 5.a3 Bxc3+ 6.bxc3 Qc7 7.Qg4 f5 8.Qg3 Nc6!?


図 1 Ootes-Yamada 白番

 このゲームは4R、オランダジュニアチャンピオンのOotes Larsとの一戦です。前日夜に自分のデータベースで彼の指したゲームを見なおした僕は、このライン(もちろん自分の研究ラインです)を徹底的に見直しました。この8手目はウクライナのGM Moskalenkoが著書で推奨している一手です。

 ※ただし、Moskalenkoの著書「Flexible French」ではこの手について「Ne2-f4 というマニューバーを避けて、おそらく最善の一手だろう」としか書かれていません。8…Nc6 がなぜ Ne2を防いでいるのかを理解するのは、かなり難しいと思います。そこで一応次の手の変化で実戦例を補足しておくことにします。

9.Nf3

 ここでは9.Ne2!?の方が自然に見えます。Ne2-f4というマニューバーはこの定跡では強力なマニューバーですが、9…Kf7! という奇妙な手があってイコールに出来ます。以下10.h4 Nge7 11.h5 h6 12.Qd7 Bd7 13.g4 Rac8 14.gxf5?! Nxf5 15.Bf4 cxd4 16.cxd4 Qa5+ 17.Bd2 Qa4 18.c3 Nce7= Ootes,L-Burg, T / Venlo2008 で互角ながら黒の方がやや有望な局面です。このゲームを(3年前に)白番で負けた彼は、当然前日にこのラインを調べていたはずです。そのためここから16手目までは研究合戦です。


試合中のウニフェ・オープン会場

9…cxd4 10.cxd4 Nge7 11.Bd2 0–0 12.Bd3 Bd7 13.0–0 Be8 14.Rab1!?N


図 2 Ootes-Yamada 黒番

 新手です…が当然こちらも研究済みです。ここでは14.c4!? dxc4 15.Bxc4?! Nxd4! 16.Nxd4 Qxc4 Smeets, J-Ponomariov, R / Tata Steel 2011 という前例があります(結果はあっさり黒が勝ちました)。すぐにc4ももちろん成立しないわけではありませんが、白はまずRab1~Rfc1とc4の準備をしてきました。

14…Rc8 15.Rfc1 Qd7 16.Qf4

 この手はやや意外で、ここから考え始めます。この手の直接の意味は黒からのf4突きというカウンターを防いだことにありますが、白のクイーンがやや受身になってしまいます。

16…h6?!

 局後ややぬるいのではないかと指摘された手ですが、このあとちゃんと指せばそれほどでもなさそうです。もっともすぐにビショップをでてd4のポーンに圧力をかけに行くほうが強力だったかもしれません。16...Bh5! 17.Ne1 h6 18.f3 Rc7 19.Qh4 Bg6 20.Qf2 f4(互角)
さらに言うならこのあとの白の手が見えていれば先にBh5と指したことでしょう。

 実戦的妙手

17.Kh1!

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図6 Ootes-Yamada 黒番

 コンピュータはこの手をあまり評価していませんが、実戦的には妙手だと思います。普通白がKh1と指すときはf4とポーンを突いたときにチェックがかからないようにする意味合いがありますが、この手は違います。白の真の狙いがわかりますか?

 白のプランはNg1~e2、Qh4、Rg1とやってg4とキングサイドに攻撃を仕掛けることです。白はそのためにg1のマスを空けておく必要があるのです!チェスの攻めというとサクリファイス、ピンなど派手な手に目がいきますが、こういった地味なやり方もあるのです。
黒はクイーンサイドからの攻撃(c4)に対しては準備していますが、キングサイドから攻撃されるとh6が弱点になる可能性があります。

17...Bh5 18.Ng1 a6?!

 この局面が黒にとって厄介なのは、白の攻撃を待つしかないという点です。黒には自分から動いていく手段が多くありません。幾つか可能性はありますが…。
 キングサイドのスペースを取ってピースをそこに送り込む戦略は悪く無いでしょう。18...g5?! 19.Qg3 Bg6 20.f4 Nxd4 21.Be3
 あるいは無理やりf4を突きにいって局面の打開を図る策もあるかもしれません。18…Ng6 19.Qe3 Qe7!?

9.Qh4 Be8?!

 Bg6からf4を突きに行くほうが面白かったでしょう。この局面ではg6はナイトのためのマスだと思い込んでいましたが、Bg6~f4とビショップ交換を迫りつつナイトをf5に設置しに行く構想の方がベターなようです。

20.Ne2 +/= (白やや良し) b5 21.Rg1 Ng6 22.Qh3 Qe7!

 もっとも僕としては、このディフェンスのプランがみえていたので、ビショップをe8まで引いたのです。この手は白のg4に対してQh4とクイーンの交換を迫ろうという手です。攻めに対して駒を交換して相手の攻撃力を減らすのは、よくある受けのテクニックの一つです。

23.g3

 白は慌てず、これを防ぎます。困ったことに黒はここで有効な手がありません。黒の陣形はこれ以上よくならないので、できることならパスしたいくらいの局面です。ここではそれほど時間も残っていませんでした。時間が増える40手までまだ大分あります。

23...Rc7 24.f3 Kh8 25.Rg2 Qd8 26.Rbg1 Kg8 27.Be1

 ラストチャンス


図7 Ootes-Yamada 黒番

 白はゆっくり攻撃体制を整えます。最後の手はg4と突いた後のQh4を消していることに気がついたでしょうか?

 そしてこの局面が黒にとってラストチャンスでした。最善手はなんでしょう?

 ここで僕が残り3分を全てつぎ込んで指したのは…

27...Rcf7??

 これで全てが決まってしまいました。唯一黒が生き残る道は27…Qg5! で、白がビショップを引いたことによって生じたe3のマスにクイーンが潜り込めばイコールです。この手は見えていたのですが、クイーンが捕まりそうでためらってしまいました…。

28.g4+-

 ゲームセットです。周到に準備された攻撃を受ける手立てがありません。

28…fxg4 29.Qxg4 Ngxe5 30.Qxg7+! Rxg7 31.Rxg7+ 1–0

 これで上位相手に3敗目を喫し、4Rで1Pと苦しい状況に立たされました。次に負けると(参加者が奇数だったため)Byeになってしまうこともありえます。面白いゲームではありましたが、負けてしまったとなると次のゲームはどうしても勝たなければなりませんでした。


大会会場近くに突然現れたカフェ(屋台のような・・・)

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 マスターのコーチがついて

 その次のゲームの相手は地元オランダ、わずか10歳(!)の少年でした。
Van Foreest, Lucas君(ファンフォレースト・ルーカス君)はレーティングこそ1900台前半(それでも強い!)ですが、スポンサーと、マスターのコーチがついている有望株です。


Van Foreest, Lucas (10) レーティングは1918。オランダU10の2011年チャンピオンであり、U12の国内ランキングはナンバー2!(1位は彼のお兄ちゃん、Jorden君)

 面白い構想


図 3 Yamada-Van Foreest, L 黒番

 彼とのゲームはこちらが白番。QGD (Queens Gambit Declined)で、互いにどういうプランが良いのかわかっていない中、手探りで進んで図の局面になりました。白がRfd1と指して黒番ですが、ここから彼が面白い構想を見せます。

15…b4!

 d1のマスが埋まったのをみてポーンを突きます。最初この手をみてなんだこれは?と思いましたが、すぐに面白い構想であることに気が付きます。

16.Na4 Bxf3!? 17.Qxf3 c4

 これが彼の構想で、ダブルビショップを放棄する代わりに、白のナイトを端に追いやりbとcに並んだ2つのポーンで圧力をかけに来ます。白としてもa4のナイトの行き場が無いので要注意です。
ただしビショップを手放したために白もセンターに圧力をかけにいくことができます。

18.e4

 これに対してLucas君の応手は…


図 4 Yamada-Van Foreest, L 黒番

18…e5!

 当然こうです。危険に見えますがこれがベストムーブで、18…Qa5 19.b3 c3 20.e5 Nd5 21.Qe4 g6 22.Bxe7 Nxe7 23.Qh4 Rfe8 24.Qxh6では次に白からh4-h5が厳しく、イコールに近いとはいえ白が主導権を握る展開でしょう。

19.dxe5 Nxe5 20.Qf5!

 こちらも最強の応手で返します。b1のビショップと連携してメイトを狙っているのがポイントです。

20…Qa5

 この手は試合中疑問手だと思っていました。僕の読みは20…Qc7(?!)の一手で、21.Bg3とやり白がやや良いだろうというものでした。Qa5の方は次の手があるのでダメだと思い込んでいたのです。

21.f4? (図)


図 5 Yamada-Van Foreest, L 黒番 問題③

 これでa5のクイーンが浮いているために、ナイトが逃げられません(21…Nc6? 22.Qxa5 Nxa5 23.e5 +-)。f4を突くときは常にg1のキングにチェックがかかることを気にしなければいけませんが、取られる寸前のa4のナイトが黒マスをよく抑えています。
実戦は

21…Qxa4 22.fxe5 Bc5+ 23.Kh1 Nh7 24.e6! fxe6 27.Qxe6+ Kh8 28.e5!

 となってダブルビショップとクイーンの強さを存分に活かし、勝ちになりました。黒のクイーン、ビショップ、ナイトと比べてみると、その差は明白です。
ところが、感想戦も終わり帰ってきて棋譜をパソコンに入れている途中で、実は図の局面で黒の勝ちがあることに気が付きました。少々難しいですが問題です。黒の勝ちを探してみてください。


対局する盤にはネーム・カードがついている

 上位ボード進出へ望み

 このゲームに勝ち、なんとか上位ボード進出へ望みをつなぎました。これはすごく大事なことで、トーナメントでは上のボードで指すというのも大事な事なのです。もちろんポイントを取らなければ上で指せませんが、入賞を目標とするよりハードルは低いでしょう。みなさんも「今回の公式戦では1回でも5番ボード以内で指すぞ!」という風に目標をたててみると、また違った楽しみ方ができることでしょう。
 さて、6ラウンドはWIM Van Weersel, Arlette(ファン・ヴェールセル・アーレッテ)に黒番。レーティングは2191とこちらよりもやや高く、何より1RではGM Ernst, Sipkeに完勝している相手です。しかしここまで僕が負けた相手のレーティング(2370、2581、2340)よりも大分落ちるので、ポイントをとるならこのラウンドが勝負でした。
 前日の夜、そして当日の午前中のほとんどを準備に費やし自信を持って会場に向かいます。黒番でしたが負けるかもしれないとは全く思いませんでした。

 次回はこのゲームを紹介します。

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 図10

 図10 Yamada-Van Foreest, L 黒番

 試合中僕は図の局面で勝ちだと思って、余裕で会場を歩き回っていたのですが、次のような絶妙の切り返しがありました。

21…Nfg4!

 この手は完全に盲点になっていました。このナイトがピンになっているので、どうしても見えづらい手になってしまいます。しかし22.Bxe7?? とやってしまうと22…g6!でクイーンが取られてしまいます。
しかしこの手自体は僕も試合中読んでいました。僕の読みは

22.fxe5 Ne3! 23.Qf4

 で、これでe7のビショップとe3のナイトが両取りになり勝ちだと勘違いしていたのです。もちろんそれは誤りです。

23…Bxh4 24.Qxe3 Bg5!

 これが完全に読みから抜けていた手です。g1-a7のダイアゴナルでの串刺しは気をつけていたのですが、こちらのダイアゴナルでの串刺しは頭にありませんでした。

25.Qb6 Qxa4 26.Rc2 Rfd8!

 駒の損得はありませんが、すでに白の負けになっています。働きを失っていたはずの黒クイーン、ビショップ、ルークが全て良いところに利いていて、一方先ほどまで強力だった白のピースは今や団子になって、無い方がマシ、という状態になっています。

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写真

大会会場

 長丁場の大会で指すことの楽しさ

10月14日からオランダ、Hoogeveenで開催されたUnive Openに参加してきました。僕の予定としては4~5回程度の自戦記でこのトーナメントで印象に残ったことを書いていくつもりです。
この自戦記は特に函館チェスサークルの皆さんのために書こうと思います。皆さんにヨーロッパのチェスのレベルの高さ、層の厚さ(あとで紹介しますが強い小学生がたくさんいます!)、長丁場の大会で指すことの楽しさ(この大会は1日1局、9日間のトーナメントでした!)、そういったものが伝わればいいなと思います。もちろん伝わるだけで終わってしまってはダメで、それをみてサークルの皆さんが函館以外の大会に積極的に参加してくれるような、そういうレポートにするのが僕の目標です。

もちろん上級者の人たちや、サークル以外のチェスプレイヤーにもためになるようなチェスの話もどんどん書こうと思います。僕自身海外大会に一人で参加するのは初めてだったのですが、いままでの大会とはまた違う経験も出来ました。その経験が他の日本人プレイヤー(特に学生)が海外進出するための足がかりになってくれればと思います。


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 旅立ち

10月8~10日まで東京・蒲田で行われたジャパンオープン8局を戦い終えた次の日、成田空港からUniveOpenに参加するため旅立ちます。まずは約10時間かけてモスクワ、シェレメチェボ空港へ。今回の旅行ではアエロフロート航空というロシアの航空会社を使いました。この会社は昔から評判が悪く、荷物が途中で無くなる、乗務員の対応が悪い、座席がひどい、などトンデモない話が聞けたものですが、最近は大分改善されていて乗った飛行機も比較的新しいタイプのエアバスでした。

シェレメチェボ空港はかなり広い空港で、ターミナル間の移動だけでも結構な時間がかかります。最初どこに行けばわからないまま掲示板をみて悩んでいたら、同じように悩んでいたらしいオランダ人に声をかけられました。結局彼と共に乗り換え場所を探し出しアムステルダムまで一緒に行動しました。こういうふうにちょっとしたきっかけで知り合いが増えるのも海外旅行の楽しみの一つです。

写真

飛行機の座席では映画を見たりゲームをすることが出来ます。
このソフトはすごく弱いですけどね…

 毎日チェスをやらなければ

大会までの二日間は今やチェス界のスターとなったGM Anishの家に泊めてもらいました。Anish Giriは以前札幌に住んでおり、僕も北海道選手権で(!)対戦したことがあります。その後ロシア→オランダと国を移るたびにどんどん強くなり、今ではレーティング2722というスーパープレイヤーです。

ちょうど彼はテスト期間だったようですが、テストが終わって帰ってくると自室でコーチとインターネットを通じてトレーニングしていたようです。当然のことですが、チェスで強くなろうと思ったら毎日チェスをやらなければならないのです。

 オーガナイザーと仲良くなっておく

14日から大会ですが、海外大会に参加するためにはまずインターネットで申し込みをします。今回は公式HPにフォームがありましたが、場合によってはオーガナイザーに直接メールしてみるのもありでしょう。オーガナイザーと仲良くなっておくと困ったときに何かと便利ですw

まず会場につくとそこでエントリーを済ませます。ここでやっと大会に正式に登録され、1ラウンドのペアリングに組み込まれます。僕の初戦の相手はIM Willemze Thomas(2370)。彼はChess Vibes Trainingという週刊誌の著者の一人です。結局そのゲームは白番ながらあっさりやられてしまったのですが、中盤は読む材料が沢山あった分ゲームの内容以上には楽しんでさせていたんじゃないかと思います。

図1・1

【図1・1】 Yamada-Willemze 白番

 読む順番

図1・1は黒が15…b5!と指したところです。僕はこの手を指されるまで、この局面にある程度自信を持っていたのですが、ここに来て自分の考えが甘いことに気が付きました。試合中の読み筋を少しだけたどってみることにしましょう。

読む順番としては①指し手の候補を幾つか考える、②それらを読む、③読んだ結果を比べて手を決める、という手順が普通です。まずぱっと浮かぶ手は16.Ng5でこれはいかにも強力そうです。他にも16.Qg4という手も考えられそうです。ちなみに僕が実際指したのは16.Be5?でした^^;。強い人は16.Bxg7?!も浮かんだことでしょう。僕は上の手に加えて16.Rd5!?という手も読んでいました。

 浮かんだ手を読んでいく

次は浮かんだ手を読んでいきます。16.Ng5は強力そうな手で実際16…g6?には17.Nxh7! Kxh7 18.Qh4+ Kg8 19.Qh8#があります。しかし16…f5!とポーンの形を崩して受けるのが好手で、17.Qh4 h6で何もありません。

16.Qg4は次にメイトを狙った手ですが、16…e5とされるとメイトを受けられる上クイーン取りがかかります。これではいけません。16.Bxg7?!も何かありそうですが、残念なことに16…Kxg7 17.Qg4+ Kh8 18.Ng5 f6でクイーンが受けに聞いてくるので失敗です。

色々読んだ結果僕は16.Be5?を指しました。これは黒のe5突きを防いだ手だったのですが、本譜のとおり上手く咎められます。

おそらく最善の勝負手は16.Rd5!?と新たな攻撃陣をつぎ込む手でした。16…Bb7 17.Rh5 (17.Rg5 Nd4!-+) 17…f5! 18.Qh4 h6 19.g4!で悪いながらも難しい勝負だったようです。試合中は最後のg4を発見出来ずこの手を諦めてしまいました。

本譜は16.Be5? Nxe5! 17.Nxe5 (17.Qxa8? Nc6! なんとクイーントラップです!) 17…Bb7 18.Qf4 Bb8! 19.Bf3 (19.Rd7? Qxd7!) 19…Bxf3 20.Qxf3 Qxe5 21.Qxa8(図1・2)と進みます。

図1・2

【図1・2】 Yamada-Willemze 白番

黒はルークを諦めてしまったように見えますが、違います。問題にしますので勝ちを考えてみてください。 < 解答

 英語の勉強はまじめに

 試合後はホームステイ先の家に歩いて帰ります。会場近くのショッピングモールを抜けて少し歩くと、トーナメント中に部屋と食事を提供してくれたAnkyの家があります。Ankyの家には僕の他に二人のプレイヤー、JohanとHendrikが泊まっていました。彼らはオランダ語、僕は日本語が母国語なので最初はなかなか話しづらかったのですが、なれてくるとつたない英語と身振り手振りでも通じるものです。みなさん、英語の勉強はまじめにやりましょうね…。

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写真

Ankyの家。試合は午後二時からなので昼過ぎに家を出発。朝作ったサンドイッチを持って行きます。

 驚きの当たり

 14日の夜、発表されたペアリングは(海外では前日のうちにペアリングがネットで公開されるのが普通です)驚きの当たりでした。

27 Yamada, Kohei(2093) – GM Ernst, Sipke(2581)

 なんとリスト3にいたはずのGM Ernstが27番ボードまで落ちてきたのです。それもそのはず、彼は初戦をWIM Van Weerselに手も足も出ないままやられてしまったのでした。GMでもそんなことが(たまにですが)あるのです。

このゲームは序盤ちょっとしたミスがでて一瞬でまずい局面になってしまったのですが、相手がそれを見逃してくれてイコールになりました。その後も悪くない戦いをしたと思うのですが、ターニングポイントは下の局面でした。

図1・3

【図1・3】 Ernst-Yamada 白番

図1・3は30.f3に対して30…Bxb2と取った局面です。ここでErnstは長考に入りました。僕も残り時間が少なかったので何を指されてもいいように考えておきます。指された手は…

31.Bxg5 Bg7?

 非常に勉強になるゲーム

 白がポーンを取るのは当然として、黒の応手は当然このビショップ引きだと思っていました。当然だと思っていたのでこの手の考慮時間はわずか20秒ほど。Ernstに局後まっ先に指摘された、この手が敗着でした。難しいものです。僕のプランは黒マスビショップの利きを活かしてクイーンサイドにパスポーンを作って勝負しようというものですが、この局面で正しいプランはあくまで黒のピースが集中しているd4のポーンに圧力をかけることだというのです。

Ernstが恐れていたのは31…hxg5とビショップを取り返し32.Rxb2 にたいして32…g4!とセンターを崩しにかかる手順でした。コンピュータは白良しと判断していますが、試合中の彼の感触としてはUnclear(形勢不明)だったそうです。 負けはしたものの非常に勉強になるゲームでした。準備していった序盤で悪くなって泣きそうになりましたがw(実際短い時間で負けてしまうとその日の残りは非常につまらないものです)、なんとか形にすることも出来ました。

ウニフェ2011 大会レポート(1) 3ラウンド [2011.unive01rd3]>トップ

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 悪くない気分で終えたのが良かったのか、3Rは地元クラブの強豪だというMol Christiaan(2013)に白で勝ち。彼も決して弱くないプレイヤーでしたが、彼の最終成績はなんと2/9!このトーナメントの過酷さを物語っています。彼とのゲームはずっと難しい局面が続きましたが、終盤うまい手がでて優勢になりました。(図1・4)勝ちまで読みきるのは大変でしょうが(実際僕も確信があって指した手ではありません)、次の一手を見つけてみて、その後の展開を自分で読んでみてください。 < 解答

図1・4

【図1・4】 Yamada-Mol 26…h4まで。白番

 このゲームに勝利し、再び2300台との対戦です。相手はOotes Lars(2340)。2010、2011とオランダのジュニアチャンピオンであり、強豪国オランダでトップ50に入るプレイヤーです。次回はこのゲームを少し詳しく見たいと思います。

試合前には子供たちがブリッツで遊んでいます。

左のBeerdsen, Thomas(2019)はアペルドールンのチェス教室のホープです!


ウニフェ2011 大会レポート(1) 問題の解答 [2011.unive01ans]>トップ

Yamada-Willemze戦

21…Qxa1! 22.Rxa1 Bxh2+! 23.Kxh2 Rxa8 0-1

ルークの方を取るのが好手で、2ポーンアップのエンドゲームにして勝ちです。ルークエンディングは難しく、ドローになりやすいと言われていますが、このエンドゲームはこのレベルではリザインしてもいいくらいの大差です。
ちなみに21…Qxh2+? 22.Kf1はメイトもなく、次に白からa6のポーンを取る手が残るのでイコールに戻ってしまいます。

Yamada-Mol戦

27.Qa4! +/-

 次の狙いはa6…ではなくずばっとRxb7+とぶった切ってQc6+とするのが狙いです。ちなみに僕はこの3手前からこの局面について考えていましたが、試合中27…Nf6!?とされるとどう勝つのかわかっていませんでした。この局面で僕が何を読んでいたかを知りたい方は、函館チェスサークルのHP、ゲームのページを御覧ください。

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